更年期女性へのホルモン補充療法〜その利点と問題点〜
関西医科大学第8回市民公開講座 |
「更年期女性へのホルモン補充療法〜その利点と問題点〜」 |
神崎 秀陽 (関西医科大学附属病院産婦人科教授) |
平成18年(2006年)2月4日(土) |
関西医科大学附属病院南館 臨床講堂 |
司 会 中井 吉英 (関西医科大学附属病院心療内科教授) |
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司 会(中井吉英:関西医科大学附属病院心療内科教授)
これまでは男性の更年期障害でしたが、次に女性の更年期障害について。更年期女性へのホルモン補充療法が随分盛んに進めれていますが、最近はその考え方も変化しています。このあたりのことも含めて産婦人科学講座の神崎教授にお話ししていただきます。
神崎(関西医科大学附属病院産婦人科教授)
(スライド1)
私は男性更年期の真っ只中の年代で自分で不安になりつつありますが。先程松田先生は女性の更年期は昔からあったのではないかとおっしゃっていましたが、実際に女性の更年期障害の問題が大きく出てきたのはそんなに古いわけではありません。何百年前というわけではありません。
(スライド2)
これは女性の平均寿命と閉経の年代の変遷です。教科書から引用しています。女性の平均寿命はご存じのように最近はどんどん延びていますが、更年期の年代は昔からそれほど変わらず50歳前後です。ところが1900年頃、今から百年くらい前から女性の平均寿命が閉経の年代を超えてきます。これは男性も女性も同じで、それまでは特定の人に認められたという程度、古い文献を見ると長生きした女性に更年期障害があったという記録がありますが、一般的に社会的な問題になるというのはせいぜい百年です。実際には百年ではなくて40、50年前から、それも日本からではなくてアメリカやヨーロッパで閉経と更年期障害が問題になった時期があったということがわかりました。
(スライド3)
閉経は男性の更年期と違って割と明確に、卵巣の働きがぴたっと止まってしまったとき、という一定の時期にあり、50歳という閉経年齢を中心にして起きます。ただ現在では57、58歳でも月経がある人もいれば40代前半で月経がなくなってしまう人もいるので、年齢幅は広がっています。閉経の年代がその方にとっての更年期の一つの目安になります。男性の場合は45〜65歳と言われましたが、女性の場合は45〜55歳くらいの10年くらいで、男性よりも短い。
卵巣の働きが止まる時期、つまり閉経の年齢は時代、人種、国を超えてだいたい一定で、だいたい50歳です。なぜかというと、生まれたときに卵巣に存在している卵子は母親のお腹の中にいるときから持っている卵子で、精子と違ってそれから後は二度と作られません。ですからの生まれたときの卵子の数で一生の卵巣の働きが決まってしまっています。
女性の卵巣の中の卵子の数が一番多いのは実は胎生期で、約200万〜400万個あります。生まれる前のお腹の中にいた時期が一番多い。生まれた瞬間から減りはじめ、思春期になった段階で数十万個までに減っています。それからも卵子は月経の周期ごとにどんどんと何十個と失われていって、卵子がなくなると排卵しなくなります。それと同時に女性ホルモンが出なくなるのがちょうどこの閉経の年代です。
ただ問題は平均寿命が84、85歳ですから、閉経の年齢が50歳でも、月経が始まって閉経までの性成熟期と言われる約35年間の後、閉経から寿命が尽きるまでに30年以上あります。今では生殖年齢を超えてほとんどそれと同じくらい人類が長生きをし始めました。そのことから特殊な動物だと言われています。生殖年齢が終わればそこで寿命が尽きるというのが一般の動物ですが、人間の場合はそうではなくて閉経後に生殖年齢とほとんど同じくらいの期間生きることになります。
(スライド4)
男性ホルモンはテストステロン、女性ホルモンはエストロゲンと呼ばれます。男性ホルモンはすっと上がって更年期からだらだらと下がっていきますが、エストロゲンの分泌は更年期がきて卵巣の働きがなくなるとすとんと落ちます。あっという間で、1年以内くらいに思春期の前の状態まで落ちてしまいます。急峻な落ち方をしますから、ホルモンに依存している症状の現れ方は非常に明確で、男性ホルモンの欠乏による症状よりもかなりわかりやすい。だから更年期障害という言葉が生まれたのも理解できます。ちなみに更年期という言葉は、女性には性成熟期があって閉経があって以降老年期を迎えますが、若い時期から老年期へ差しかかる階段の踊り場のようなところという意味で使われています。
(スライド5)
更年期の早い時期には男性更年期障害と同様に、のぼせ、ほてり、発汗、不眠などがあります。男性ホルモンが減っていくのも女性ホルモンが減っていくのも現れる症状はよく似ています。少し遅れて出てくる症状は、これも男性の症状にもありましたが、骨が弱くなる。男性ホルモンと違うのは血管障害あるいは脳の障害が少しずつ出てきたり、性器の萎縮が起こってきます。変化が急激にくるので心臓病がふえると言われています。
女性ホルモンが分泌されている間は実は女性の心筋梗塞は男性よりも圧倒的に少ない。心筋梗塞で亡くなる率は普通は男性のほうが高いのですが、更年期を過ぎて心臓病になると女性の死亡率は男性より高くなります。心臓を守っていた女性ホルモンがなくなったとき、そこでもし心臓に病気があれば死亡率が高くなります。ただ幸いなことにその時点でも男性と女性を比べると、心臓に持っているリスクは男性のほうが大きいので、トータルとしての死亡率はずっと男性のほうが高い。しかし閉経後でもし心臓の血管に異常があって発作を起こせば、病気にかかった人あたりの死亡率は男性よりも高くなります。
繰り返しになりますが、のぼせたり顔がほてったり汗が出て眠れなくなる、これが典型的な症状です。男性にもこれとよく似た症状が出ています。
(スライド6)
男性はあまり気にしませんが、もう一つ違う点があります。実は男性でも起こっている皮膚症状。皮膚の表面だけでなくて皮下にあるコラーゲンを女性ホルモンは作っています。コラーゲンというと化粧品を思い出されると思いますが、女性らしい皮膚のしなやかな柔らかな状態を作っているコラーゲン組織がなくなってしまいます。
それがほんとうに女性ホルモンと関係していることを示すデータがいくつかあり、女性ホルモンを実際に補って皮膚のコラーゲンの量を測ってみると、ちゃんとそれが維持されるかふえています。化粧品に入っているコラーゲンを塗ってもほとんど皮膚から吸収されません。実際に皮膚のコラーゲンを維持するには女性ホルモンを補うのが一番早くて確実な方法です。実際に薬を使っている人はすぐに実感されます。早い時期から自分でも自覚できるのはこの皮膚の症状だと思います。
皮膚の張りがなくなる、乾燥肌になってしわがふえることからアメリカではHRT(ホルモン補充療法)を受けている方が30%ほどいます。いつまでも若々しく見られたいという願望が強かったり、それが仕事などいろいろなことに関係してくるために、欧米ではこういった外見的なことを中心に考えている方が多いようです。この感覚は我々日本人とは違います。日本人の場合、ホルモン補充療法をしたからといって、新聞で騒がれるほどに大きな問題を起こしたという報告はほとんどありません。アメリカでは日本人と違って60歳、70歳という高齢の方が積極的にホルモン補充療法を受けていることが理由の一つに挙げられています。それが新聞に掲載されると、一律に全部よくないととらえられてしまって、我々は疑問に思っています� ��実際にアメリカでも最近では一時の報道は行き過ぎだったと考えられています。
(スライド7)
肥満の啓発キャンペーンの成功
これは細かいスライドですが、年齢が50歳ぐらいを境にして最初に出てくる症状をみると、月経がおかしくなって不正出血があったときに先程ののぼせや紅潮など自律神経症状、それからいろいろな精神症状が出てきます。さらに年齢が進むと最後は骨が弱くなって骨粗鬆症が起こります。
これらの状態の原因は、すべてではありませんが、一つには女性ホルモンが50歳前後で閉経によって非常に低くなってしまうためです。男性ホルモンと同様に、女性ホルモンは卵巣以外のところでも作られるので全く0にはなりません。卵巣以外で女性ホルモンを作る一番大きな組織は皮下脂肪です。皆さん方も経験されているかもしれませんが、一般的に皮下脂肪の多い方のほうが女性ホルモンの平均閾値は低いけれども高めにあります。やせている方のほうが低くなります。そうなると更年期障害が出やすいタイプがなんとなくわかっていただけると思います。
(スライド8)
更年期という言葉は僕は実はあまり好きな言葉ではありません。これは誰にでも起こることで、これを病気ととらえるかどうかというのは非常に難しい問題です。症状がなければ別に病気ととらえる必要はないと私も含めて皆さんも思っていると思います。
更年期になると誰しもこのような山に出会います。山の高さは個人でさまざまです。このときにいろいろな症状が出てきますが、その人の持っているそれまでの生き方や考え方、足腰の強さによって、山を平気で登ってしまう方もいれば、低い丘でもしんどい人がいます。男性も女性も山が現れ、男性のはなだらかな丘かもしれません。女性のは立ち上がりの急な険しい山かもしれません。そこを乗り切って、55歳以降、60歳くらいで安定した状態になるまでの一時期を何とかうまく過ごそうというのが更年期に対するホルモン補充療法の考え方です。
ですから更年期障害に対してホルモン補充療法をする場合、治療期間の一つの目安は長くても4〜5年です。先程の男性ホルモンの場合は6カ月という短期間でしたが、女性ホルモンの場合はこの年代に関しては4、5年続けても問題になったというデータは全くありません。ただし65歳や70歳の女性に同じようなホルモン療法を始めると問題が起きるおそれがあります。
ホルモン補充療法の考え方の基本はこの山をどうやって越えるかです。自分のライフスタイルや食生活を整えて頑張って越えるか、ちょっと別の方法を使う。例えばトンネルを掘って抜けてしまえば楽であろう。トンネルを掘って抜ける道がホルモン補充療法の考え方で、薬を使えばここを乗り越えられるということです。
(スライド9)
大事なことは更年期障害と言われているものすべてがホルモンのせいであると思ってしまわないこと。つまり卵巣の機能が低下して更年期障害が出る場合、ほかの何かが原因となることがあります。例えば心の病気。男性と同じく女性も50歳前後というと家族のこと、子どものことでいろいろストレスがかかります。男性の場合は多くは仕事でしょうけども、女性では家庭のことが多い。ちょうど問題が出やすい時期にホルモンに関係なくいろいろなことが起きてきます。
もう一つ、この時期はホルモンが足りないこと以外に、他の病気も出やすい。典型的には甲状腺という体の機能を維持している大事な組織の働きが急に弱くなってしまう甲状腺機能低下症という病気があります。これが男性より圧倒的に多く、ちょうど更年期ぐらいに好発します。そういった他の臓器の異常が合併していることがあります。
ですから卵巣の機能低下に気をつけて治療するのは我々の役目ですが、それ以外のことも十分考えておかないと、自分の体で起こったことすべてが卵巣ホルモンが足りないことに因ると考えてしまうと、また問題が起こることもあります。
(スライド10)
卵巣のホルモンにはたくさんの作用があります。男性ホルモンと同じく、卵巣で作られたエストロゲンという女性ホルモンはもちろん脳に働いて月経周期の調節をします。それ以外に脳そのものにも賦活作用があり、脳の血管に作用して血流をふやすことができます。同じことが心臓にも働きます。
肝臓に対して、コレステロールなどを代謝する酵素を調節して高脂血症、高コレステロール血症になるのを防ぐ作用があります。ですから更年期を過ぎたとたんにコレステロールが上がったり中性脂肪が高くなったりします。それは女性ホルモンが下がったことが原因になっています。
乳房に関して松田先生から女性特有という話がありましたが、実際には男性にも乳腺があります。だから男性にも非常に少ないのですが乳がんがあります。ただ圧倒的に女性の乳腺のほうが女性ホルモンに依存して目立っています。これには女性らしい体つきにするというメリットがあり、ホルモンを補うことで乳腺の細胞を積極的にふやして乳房をふっくらさせますが、この作用が逆に乳房の癌の発育あるいは癌の発生に関係しているということも明らかになっています。これが補充療法の問題で、先程の男性ホルモンが前立腺に対して働いているのと非常によく似ています。
子宮は妊娠をした後赤ちゃんを育む大事な臓器ですから、エストロゲンは子宮の発育を促します。女性ホルモンも男性ホルモンと同じく骨に対して大事ですが、女性ホルモンは骨を作るのではなく、骨が吸収されていくのを防ぐ作用があります。ですから代謝されて吸収される過程をブロックして骨が薄くなのを防ぎます。骨粗鬆症に対して女性ホルモンが有効であるというのはこの骨の吸収を抑える作用によるもので、整形外科の先生も骨の吸収を抑える有効な薬の一つがエストロゲンであると言っています。
血管壁に対して血管壁の細胞そのものもやわらかくして動脈硬化を防ぐ作用があります。それが引いては血管壁を膨らまして血流をふやすことになります。それから先程の皮膚コラーゲン。女性ホルモンのこのような作用は先程の男性ホルモンとは違って女性らしい体型、性機能を維持するために大事です。
(スライド11)
これは卵巣の中の卵子の写真です。これは実は生まれたばかりの赤ちゃんの卵巣です。病気で亡くなっていますが。このように卵巣にはたくさん、何百万という卵子がありますが、50年後には右写真のように、閉経後の卵巣は結合組織だけで卵子はどこにもありません。このようにして卵子がどんどん失われてなくなる年代が閉経の45〜55歳で、個人差があります。
これは我々の遺伝子に組み込まれた自然のなりゆきですから、これを人為的に遅らせることは残念ながらできません。早めることはできます。例えば癌になって抗癌剤を使うと卵巣はダメージを受けやすく、閉経が早くなって30代で月経がなくなってしまいます。あるいは子宮癌のために放射線治療をした場合、若い人がこれになると放射線で卵子が壊れて月経もなくなってしまいます。そうすると20代、30代の若さで更年期と同じ状態になりますから、絶対的なホルモン補充療法の適応として我々は治療しています。
(スライド12)
更年期になってホルモンがずっと下がるといろいろな症状が出てきます。それはホルモンの下がり具合とパラレルに動いています。
(スライド13)
ここから治療の話をします。松田先生のお話では男性ホルモンを使って有効だった方は半分くらいでした。女性ホルモンに関しても出てくる症状に効くものと効かないものがもちろんあり、更年期障害がすべてホルモンで治るというのは間違いです。更年期障害という言葉の定義が難しいのですが、ホルモンによって治せるのは顔がほてる、汗をかく、手足が冷える、肩こり、関節痛など血管や運動器に関するある意味ではわかりやすい症状です。
精神症状は別の要素がかかわっているので、女性ホルモンだけでは治りません。男性と同じく精神的なケアやカウンセリング、ライフスタイルの変更を含めた指導が必要になってきます。なおかつそれだけで足りない場合には抗精神薬を使うこともあります。これは産婦人科医が使うこともありますが、精神科や心療内科の先生方のほうが主体になって使います。そのときにホルモン補充療法を加えることもあれば全く必要ない場合もあります。
我々の更年期外来に更年期障害と思って受診された方のうち、実はうつ病だったという方が結構います。その人たちに更年期障害と思ってホルモン補充療法をしてもほとんど効きません。早く見分けてちゃんとした専門的治療を受けさせるのも我々産婦人科医にとって大事なことだと言われています。
(スライド14)
うつ病取水堰
実際にエストロゲンがなぜ効くのかというと、細胞にホルモンが結合する特別の場所があり、それをレセプター(受容体)と言いますが、そのレセプターにエストロゲンが結合して初めて作用が出てきます。我々がホルモン補充療法で使っている薬は合成したり抽出したもので、薬物という言葉を使いますが、この受容体に結合します。
女性ホルモンについて注意しておきたいことは、エストロゲンの受容体に引っつくものはエストロゲン以外にもたくさんあることです。例えば植物エストロゲンやつい最近問題になった環境ホルモンがそうです。環境ホルモンはだいたい合成されたもので、ダイオキシンやDDTのようなものを環境ホルモンと呼んでいますが、それ以外にも植物エストロゲン、例えば大豆に含まれるイソフラボンや中南米で作られている薬物は薬局やデパートで売られています。ですから何であれ作用が出るものがエストロゲン受容体に結合すれば結果的にエストロゲンのように作用します。それを知っておいてください。
ですから食べ物が安全で薬が危険ということは一切ありません。私は同じだと思います。そういうものをあってはいけないときに多量に摂ると、食べ物であろうが薬であろうが結果的には同じことが起きます。それは乳癌に対してわかっていることです。
(スライド15)
ホルモン補充療法の適応はほとんどが更年期の方で、先程の山を乗り越えるための治療です。老年期の方、65歳、70歳の方がどうしても困っていて症状を改善させるために短期間治療に使うことがありますが、原則は更年期の方です。また早発閉経症の方には絶対補わないと女性としてのいろいろな機能が損なわれてしまいます。同じように手術をして卵巣を摘出しなければならなかった人。例えば癌も含めてです。予防的には骨が弱い人あるいはコレステロールの高い人には内科的な治療を中心にしながら補助療法を行います。
予防的に投与したほうが望ましいというのは、体型が細くてきしゃで皮下脂肪が少なくて、45歳、50歳のときに骨量を測ってみると普通の人の70%くらいしかない、このまま減り続けると65歳で半分くらいになって将来骨粗鬆症になるという問題が出てきそうだという場合が考えられます。そこで4、5年間しっかりと予防的投与しておくことで、その人の10年先、15年先の骨量を維持できます。その他には、心疾患のリスクが家族歴にあって、コレステロールの高い状態が長く続くと非常に危険な患者さんにも予防的投与が望ましいとされています。
(スライド16)
例えば脳の血流を実際にふやします。これは私のデータではありませんが。この会場でもプレマリン(結合型エストロゲン)を飲んでいる方がいるかもしれませんが、プレマリンはホルモン補充療法に使われる典型的な薬です。それを3週間続けて飲むと血液循環がどうなっているか、脳の血流を特殊な器械で測ってみると、大脳でも小脳でも飲む前と比べてこれだけ上がっています。飲まなかった人はほとんど変わっていません。プレマリンは血液中のエストロゲンレベルをどんどん上げるという薬ではないのですが、少量であったとしても補うことで確かに血液の流れを改善させます。これによって手足の冷え症が治ります。いろいろな症状を改善するキーポイントは、やはり体をめぐっている血液の流れをよくすること� ��、その効果が脳にすら現れています。考えてみると恐ろしいと言えます。強い作用がありますが、気をつけて使えば大丈夫です。
(スライド17)
問題はこれです。2002年のこの記事を読んだ方がいると思います。今から数年前、アメリカでホルモン補充療法の治験(臨床試験)をしていたら、危険だから途中でやめたという記事です。ホルモン補充療法で乳癌がふえるということは20年前からわかっていました。それを前提にアメリカで行ったホルモン補充療法の大規模な治験は、乳癌がふえるかもしれないけどもそれ以上のメリット、つまり心筋梗塞で亡くなる方が減るだろうという期待から始めています。アメリカでは心筋梗塞で亡くなる人が多いので少しでも減らしたいという希望があります。ところがいくらやっても心筋梗塞は減らなかった。乳癌は必ず出ますから、乳癌がふえるような治験はしないほうがいいと判断して、5年の予定を3年で中止しました。
この治験に関する論文をしっかりと読むとわかりますが、受けた方の平均年齢が65歳で、心筋梗塞のリスクのある人あるいはリスクのある年代の人が多く含まれています。例えば非常に太った人や喫煙者もこの治験に参加していたわけです。我々がホルモン補充療法の対象として考えている人とはだいぶ違った考え方ですが、この治験で乳癌の危険性が大きな問題になりました。
(スライド18)
ホルモン補充療法をすると、女性ホルモンも男性ホルモンもリスクとなる癌が間違いなくあります。細胞を元気にさせる作用があるわけですから、当たり前と言えば当たり前です。
エストロゲンという女性ホルモンでものすごくふえる癌は子宮癌のうちの子宮体癌です。子宮内膜癌とも言われるものです。それを使わなかったときと比べると8倍くらいふえます。しかし幸いにしてもう一つの女性ホルモン、プロゲステロン(黄体ホルモン)を一緒に投与すると完全に抑制できます。子宮頸癌と卵巣癌は変わりません。乳癌は1.2〜1.4倍ぐらいふえます。ですから子宮体癌と乳癌はどちらも子宮内膜や乳腺というエストロゲンに依存している細胞に由来するので、エストロゲンを使うとふえます。先程の前立腺癌が男性ホルモンでふえるのと全く同様です。それ以外には関しては関係がなく、ほとんどこの2つだと言われています。体癌はプロゲステロンを補うことで完全に抑制できるだけでなく、逆に下がるというデー� ��も出ています。
(スライド19)
アメリカでなぜ先程の大規模な治験を実施したかというと、その約10年前にGradyらから白人の女性でこのようなデータが出されたからです。心筋梗塞など冠動脈疾患の発生はホルモン補充療法をしなかった人を1とすると、ホルモン補充療法をした人では0.65まで下がったという報告です。かなりたくさんの症例を集積していました。もちろん骨が強くなるので骨折が減り、寝たきりの人が少なくなります。心臓病で死ぬ人も減ります。ただし乳癌はふえます。子宮体癌はエストロゲンだけでは8倍にふえますが、プロゲステロンを併用すればほとんどふえません。ただしプロゲステロンを使っても乳癌はやはり同じようにふえます。
だから問題はこの部分ですね。乳癌の危険を覚悟して、心筋梗塞が減るかどうかの治験が始められ、対象には平均65歳で、70歳くらいの人まで含まれていた点です。結果的には、もともとのGradyらの論文の患者層と大規模治験の患者層とはかなり違っていました。
(スライド20)
乳癌がなぜそれほど問題かというと、乳癌の死亡率を見ればわかります。一番上はイギリス、次がカナダ、米国北部、日本の順番で、人口10万人あたりの死亡率は日本では圧倒的に少なく、今でも少ない。ただしじわじわ上がってきています。イギリスやアメリカではピークから下がってきていますが、依然として高い。
英国では6人に1人、アメリカでは7人に1人くらいの女性が一生の間に乳癌にかかります。日本の一番新しい統計では1/20〜1/25、日本では女性20〜25人に1人が乳癌になるという率です。これを考えてみると、欧米はものすごく多いですね。他の病気と比べるのは難しいのですが、卵巣癌は70〜80人に1人くらいの発生です。それを考えると何倍か高い。アメリカやイギリスのような7人に1人の女性が乳癌になるという国でホルモン補充療法をすると、乳癌のリスクがさらに高まり全体の患者数がものすごくふえます。
余談ですが、日本でふえてきている理由が問題になっています。今から40、50年前、もともと日本人の乳癌は少なかったはずです。それが着実にふえているのはただ単に発見率が上がったからではなくて、実際に患者さんがふえています。この原因には食生活やライフサイクルの変化があると言われています。
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乳癌がふえる原因は女性ホルモン以外に女性ホルモンに類似した物質が食べ物の中にたくさんあるからだろうと考えられています。例えばアメリカでは牛に成長ホルモンを使っていると聞いたことがあると思います。それ以外にもよくわからないことが多々ありますが、エストロゲンという名前はついていなくても、女性ホルモン様の作用を持った合成物質を発育を促進するために家畜に使っているらしい。それが食べ物を通じて体内に入ってくれば女性ホルモンとして働きます。その積み重ねで日本でも徐々にふえてきています。食生活が欧米化するほど乳癌はふえます。
これは日本だけの現象でなく、たぶん中国やインドやその他の国でも同じような現象が起きてくるおそれがあります。これをどうとらえるかは非常に難しい問題で、きょうのテーマから離れますが、我々は女性ホルモンの危険性と安全性を十分考えなければならないと常日頃言っています。
(スライド21)
女性ホルモンでリスクがあるのはエストロゲンという卵胞ホルモンです。女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)は通常はありません。男性でも女性ホルモンは皮下脂肪や副腎から少し作られますが、このプロゲステスンは女性でなおかつ月経があって排卵する女性にしかない。つまり排卵した後の卵巣の黄体からしか作られないホルモンです。
このプロゲステロンが定期的に働くことで月経が毎月あり、それが子宮体癌の発生を下げています。子宮癌には大まかには頸癌と体癌と2つあり、子宮頸癌の発生はヒトパピローマウィルスがほとんどの原因であることが最近わかってきました。子宮体癌の発生に関してはエストロゲンが一定期間働いたところにプラスαで未知の要素があります。ただしプロゲステロンがちゃんと働いて毎月月経がある間は女性は体癌になりません。子宮体癌の90%以上は閉経後にしか起きません。ただし頸癌はウィルス感染が引き金になっているので、20代でも30代でも発生するおそれがあります。
我々が女性ホルモンを補うときに、子宮体癌がある方には必ずプロゲステロンを一緒に補います。エストロゲンだけでホルモン補充療法をすると体癌の危険性は8〜10倍に上がります。だから子宮のある人には必ずプロゲステロンを併用したホルモン補充療法を行いますが、例えば子宮筋腫で子宮を摘出してしまっている場合には子宮体癌のリスクがないのでエストロゲンだけになります。
乳癌は両方でホルモン補充療法をしたからといっても防げません。逆にプロゲステロンを併用すると若干上がるというデータも出ています。ですから同じ女性ホルモンでも標的臓器の違いによって働きが違ってきます。その説明は難しくなるので省きますが、先程のレセプターにいくつか種類があって、そのレセプターに結合する程度が臓器によって違うことで、臓器特異的な働きに差が出てきます。
(スライド22)
わかりやすくいえば、アメリカでは何もしなければ人口10万人あたり242人の子宮体癌が発生しています。そこでエストロゲンで治療すると2倍くらいふえます。さらにプロゲステロンを併用すると減ったというデータです。ですからプロゲステロンに関しては変わらないというデータもありますが、ちゃんと補うことでホルモン補充療法で乳癌はふえるけれども体癌は抑えられると言えるかもしれません。
(スライド23)
これはアメリカの大規模試験の結果で、エストロゲンとプロゲステロンを併用すると冠疾患(心臓の疾患)が防げるかどうかを検討したところ、両方を補充するほうがプラセボ(偽薬)に比べて若干よかったというデータです。
ところがこの結果が先程の治験で否定されたことによって、先程の記事に見られるような問題が起きてしまいました。ただしこの2つの試験は年齢や対象、人種が違うので簡単には比較できません。
(スライド24)
更年期の人に症状があればホルモン補充療法を誰にでもやっていいかというと、してはいけない人がいます。専門的には禁忌という言葉を使っています。まずこれまでの話のように癌を持っている方には絶対的禁忌です。特に体癌、乳癌が現在もあれば全くたいへんなことになります。過去に癌の治療を受けた既往のある人。例えば乳癌の手術を受けて5年経過していても、やっていいかどうか難しい問題です。完全に治っているとリスクはないのですが、更年期症状を消すためのホルモン療法と癌の再発のリスクとの兼ね合い、バランスの上でよほど慎重に考えます。それでも最近ではホルモン療法を受ける方はまれにいます。
エストロゲンは血液の固まりやすさ、凝固機能を亢進します。女性は月経のために定期的に子宮から出血を繰り返してしています。また出産時には大量の出血をします。ですから本質的に女性ホルモンには血液を固まらせるような働きがあります。それが補充されることで逆に血が固まりやすくなり、血栓症を誘発することがあります。特に肥満の方では足にうっ血して血栓ができることがあります。こういう血栓性疾患のある人には絶対してはいけない。それが悪化するおそれがあります。
あと怖い病気ではないのですが、エストロゲンで大きくなるのが子宮筋腫と子宮内膜症と乳腺症です。一応良性疾患に分類できますが、エストロゲンがあることで発育を促します。こういった病気を持っていると相対的に症状との兼ね合いで、してはいけないわけではありませんが、注意しながらホルモンを補充するか、するならできるだけ少量を短期間で終えるようにする工夫が必要です。それ以外に合併症がある方も当然ですね。
ここにヘビースモーカーとあります。喫煙者はいろいろな意味で血栓性の病気を起こしやすく、ホルモン補充療法は好ましくないと言われています。どうしてもホルモン補充療法を受けたいときには禁煙をお願いしています。
(スライド25)
細かいのですが、医療者間で使っている目安です。開業している先生方が一律にホルモンを投与するのはよくないと、日本更年期医学会は基準を作って、このような病気をときにはホルモン補充療法をしてもいいけども、これらの病気のときには気をつけましょうと注意を喚起しています。産婦人科医はこれに従ってホルモン補充療法を気をつけてやろうとしています。
(スライド26)
先程配られた男性更年期障害についての問診票と同様のものが女性の更年期障害についてもあり、女性の場合も客観的に薬が効いたかどうかの判定をするために点数化します。この数字によって、何点以上ならホルモン療法をしよう、何点なら食生活の改善で対処できるだろうと、ほんとうに治療をするほうがいいレベルかどうかも判断しています。各施設で作っていますので、ホルモン補充療法を考えるときにはその施設の更年期指数を目安にします。もう一つの利用法は治療した後にホルモン療法で治ったかどうか、客観的に評価するために使います。ほんとうに治っているのであれば点数は改善方向に変動するはずですから、治療しても点数が変わらなければホルモン療法が有効でない別のものであるということがわか� ��ます。
(スライド27)
2002年にアメリカから報告が出た後、ホルモン補充療法が危険だという話が浸透したために、実際にこの治療法で治療中の患者さんがどう思っているか、今後どうしたいかということについて、4、5年前に近畿地方の何人かの産婦人科グループで調べました。私もこのグループに加わりました。
アメリカで報告が出てホルモン療法をすると癌の危険性が上がるということが新聞に掲載されました。その調査から、ホルモン補充療法をわりに安易に受けていた方のうち、よくないと思った方がいます。続けたいかどうか尋ねると、やめるという人が4.7%、続けたいという人か38.9%、医者と相談して決めるというのが45.7%です。ほとんどが短期間なら続けるということで、実際に治療を受けている方でやめた人はごくわずかしかいませんでした。
この治療に使う薬にはたくさん種類があり、飲み薬や張り薬、その飲み方もいろいろある中で、主治医は個別にその人に一番合った方法を工夫して決めているはずです。受けている治療をすぐにやめるという人が5%もいなかったということは、この治療法自体は実際にそれだけ受け入れられていると我々は認識しました。
もし補充療法をやめるとすれば代替治療として何をしたいかという質問に対して、その答として問題となっている以外の方法、つまり新聞に出た以外の方法で治療を受けたいという方が32.2%。漢方薬を使いたいという方が35.3%。
私は漢方の専門ではないので難しいのですが、漢方薬は確かにある一定の症状を持った方には効きます。人によっては非常によく効いた人が確かにいます。ただその効果はそれほど安定しているとは言えません。試してみる価値はあるとは思いますが、漢方薬が安全かというと決してそうではないという認識を持っておいてください。
漢方薬の中には先程申し上げた植物エストロゲンをたくさん含んだ漢方薬があるはずです。エストロゲン作用のある漢方薬があるかもしれません。また抗血管作用や抗神経作用があれば効くかもしれません。更年期障害に漢方は効かないとは言えませんが、漢方薬の中にはDDTやビスフェノールと同じくらいのリスクのものがたぶんあるだろうと私自身は思っています。
高脂血症や骨粗鬆症の治療は内科と相談したり、何もしないという方も11.2%います。やめるのならもう何もしないという方です。
ホルモン補充療法は特にホルモンが急激に欠乏することによって起こる症状を乗り切るまでの何年かを治療すると我々は考えています。5年を一つの目安に、短ければ1年か2年と考えていいと思います。仮に補充療法をやめたからといって、不思議なことに治療開始時の症状には戻らないですね。男性更年期のAさんも6カ月の治療をやめた後、ライフスタイルの改善をしているのでテストステロンは下がっていませんでした。同じことが言えます、そこを乗り切れば薬をやめたからといって症状が出てくるかというと、決してそういうことはない。それはこの治療のいいところだと思います。一生続けなければならない治療では決してありません。ですから危険度を認識し納得していただいた上で、我々はその時期を乗り越えるために� ��全性を確認しながら、特に癌に関する安全性は十分にみながら薬を使います。そのためには単なる診察だけでなくて検査ももちろん要ります。
(スライド28)
更年期女性はいろいろな不定愁訴を訴えられます。その不定愁訴をさらに細かく分けて、疾患内訳と頻度を調べました。この膨大なデータは学会全体で取り組んで集めたものです。そうすると驚くことに、エストロゲンがほんとうに少なかったのは1/3でした。この結果には私も驚きました。もっと多いのは気分障害、仮面うつ病、うつ病、パニック障害など精神科的なものです。実際に、自分は更年期障害だと思っていろいろ科を回っている方の中で、ほんとうにホルモンを補って治る人は1/3だけしかいないと言えます。更年期障害という病名が有名になりすぎたために、残りの人は実は他の疾患で悩んでいて、いくらホルモンを補充しても効かないしすっきりしない。結局ドクターショッピングをしてますます落ち込んでい� ��ことになります。ですからこういうことも十分踏まえて抗神経薬を使うこともあります。
ここの中には、例えば甲状腺の病気も含めて他の器質的な疾患がありながら更年期だと思い込んでいる人もないわけではない。それはきちんと検査をしないといけません。
(スライド29)
女性の場合、急激に女性ホルモンが落ちてくるので活動能力の落ち方も急で、どうしても弱ってきたと感じてしまいます。そこで少しでも嵩上げして少しずつ落ちていくように初期レベルを上げておきます。このグラフのようには無理ですが。この考え方は骨粗鬆症の場合が典型的ですね。50歳時の骨塩量が70歳時に影響しますから、50歳時の骨塩量を高く維持しておくことで70歳で骨折するリスクを下げます。ですから事前にしっかりした食生活で備え、それと同時に骨塩量が少なければホルモン療法でもいいですし、骨の補充をしておくことが、その人の20年後にとって大事になります。
(スライド30)
今後の課題にはたくさんあります。治療効果をきちんと判定すること。他の方法との比較も含まれます。ホルモン補充療法の最新のデータをすべてのお医者さんが100%うまく消化しているとは限りません。残念ながらその傾向があります。受ける女性への啓蒙を考えることと、保険が効かない医療が結構たくさんあるので、その負担をどうするか。リスクへの対応。治療目的や治療法を十分説明しても治療から脱落する人がいます。うまく一定期間続けるためにはどうしたらいいかなど。
薬剤の改良は我々の力ではどうしようもない範囲です。もっと安全でもっと使いやすい方法はないか。例えば皮膚に貼れば一週間くらいは効果が持続して週に1回の交換でよいものとか。今は長い薬でも3日に1回は貼り替えないと皮膚からの吸収できません。それが週1回になればもっと使いやすいでしょうね。飲み薬でも形状の安定した薬がないか。そのような工夫はこれからされると思います。女性ホルモンには注射剤もありますが、男性ホルモンと違って幸いにも薬剤の選択の幅が非常に広いです。
(スライド31)
更年期、老年期には検査して初めてわかる疾患があります。もちろん症状があればわかりやすいのですが、全く元気で症状がなくても測ってみると実は非常に骨量が足りなかったりコレステロールが意外と高かったり。産婦人科では癌検診も一緒にできますが、更年期時期には男女を問わず症状の有無を問わず内科でも人間ドックでもいいですから検診を受けて、その時点の状態をチェックしておくことで、それ以降5年先、10年先、20年先を健やかに過ごすために役立てることができます。
どうもご静聴ありがとうございました。
司 会
神崎先生、どうもありがとうございました。男性更年期と同じで単にホルモンが下がっているから補充すればいいというものではありません。ホルモンは脳の影響も受けているので、心や社会など全体をみないといけない。それからホルモン補充療法は絶対適応のある人とそうでない人がいること、ホルモン補充療法には副作用があったり虚血性心疾患に対する影響もあります。随分解明されてきていますから、専門医の指導を受けながらホルモン補充療法をしたほうがいいということを非常にわかりやすくお話しいただきました。
私から質問してもよろしいですか。エストロゲンそのものも心がいろいろ影響を与えます。テストステロンもそうでしょうけども、どちらが先とは言えなくて相互関係があると考えてよろしいですか。
神 崎
ご質問は神経細胞そのものに対する作用ですね。もちろんニューロンにもエストロゲンレセプターがあります。神経細胞に限らず体のすべての細胞には男性にも女性にもエストロゲン受容体がありますが、その受容体が何をしているのかわかっていないのがほとんどです。ですから脳に関しても受容体がメインなのか、脳の血管への作用か他の組織への作用なのかわかっていません。エストロゲンは非常におもしろい薬理作用を持っている物質で、しかもありふれた物質の一つですから、逆に十分気をつけて考えなければなりません。最近の新聞に、大豆イソフラボンを妊婦さんが摂取しすぎるとよくないというのが掲載され、全くそのとおりだと思います。大豆だから安全というのではなくて、植物エストロゲンと総称され� ��いるものの中には危険なものがあるように思います。日本人の植物エストロゲンの摂取量がふえてきたことが、ひょっとすると乳癌がふえてきている理由であることは十分考えられます。
フロア
イソフラボンを多量に摂取すると問題があるのですか。
神 崎
エストロゲン作用があるので、過量になるとそれが強く出ます。特に妊婦さんがたくさん摂るとよくないとアメリカでは上限を決めました。
フロア
普通に生活している場合は?
神 崎
これは胎児への影響を考えています。普通の女性でもたくさん摂取すると体に対してエストロゲン様の作用が強く出てきますから、そこに乳癌があればそれを増悪させますし、子宮体癌のリスクは上がります。それはイソフラボンに限らず健康食品、漢方薬、栄養ドリンク剤などいずれにしても過量に摂取するとよくありません。ビタミンCでも摂りすぎることは好ましくありません。健康な普通の食生活をしている人がサプリメントで特定の栄養素だけを過量に摂取する必要はないわけです。その風潮は好ましくないと警鐘している方もいます。
司 会
どうもありがとうございました。
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